クムダセヤドー・質疑応答

クムダセヤドー・質疑応答

Q.アーナパーナができないとヴィパッサナはできないのでしょうか。

A.まずアーナパーナをして第四禅定まで得てから、ナーマ・ルーパの現象を見るようにします。ヴィパッサナで無常・苦・無我を見ますが、ヴィパッサナ瞑想ができるためには、その前にナーマ(物質)とルーパ(心)の現象そのものが分からないとできません。

ですので、アーナパーナ瞑想に成功したら、次はナーマ、ルーパの瞑想をして物質と心の現象そのものを見る必要があります。この後にヴィパッサナで無常・苦・無我を観ていきます。

アーナパーナ瞑想に成功して、いきなり「ヴィパッサナ瞑想をしないさい」といっても、ヴィパッサナする対象のことが分からないと観察そのものができません。何をヴィパッサナすれば良いかがわかりません。

たとえば三十二身分ですが、眼・耳・鼻・舌・身・意という六門(感覚器官)があります。六門にある物質を観察して確認できないと、ヴィパッサナ瞑想はできません。

眼にある物質の生滅、無常・苦・無我を観なさいといっても、六門にある物質そのものをルーパ瞑想によって分かっていないとヴィパッサナ(観察)のしようがないのですね。


・眼のヴィパッサナ瞑想をする場合~眼に含まれる物質を確認する
たとえば六門(感覚器官)の一つの「眼」には54種類の物質が含まれています。

眼のルーパ瞑想(物質の確認)をする場合、禅定に入って、禅定からでて、そのジャーナの力(禅定力)によって「眼」を見ていきます。眼を観察するといっても四界分別(物質の分析)で観察していきます。そうすると「眼の形」ではなく、「微粒子」に変わって見えるようになります。

眼に含まれている微粒子が見えるようになったら、その微粒子にどういうものが含まれているのかを一つ一つ確認していきます。眼には54種類の微粒子が含まれていることがわかります。


・眼に含まれる「見える作用」としての物質
この中で、チャック・ダスラ・カラーパという「見える働き」を司る「眼の10個の微粒子」があります。「見える働き」をする「眼の10個の微粒子」は、眼の全てに含まれているのではなく、眼の特定の部位にあるカラーパ(微粒子)になります。

これは眼の黒目の中心にあり、ダニの頭のような形をして含まれています。


・眼に含まれる「触覚」としての物質
またカヤ・ダスラ・カラーパという、「触ればどこなのかが分かる感覚」を司る微粒子もあります。

これは眼の全体に含まれています。先の「見える要素(チャック・ダスラ・カラーパ)」というのは、ただ見えることだけが優先されます。カヤ・ダスラ・カラーパのように「触ったことが分かる」働きはありません。


・「男女を区別する」物質
またバワ・ダスラ・カラーパという「男性か女性かと区別する要素」があります。男性に含まれる要素と、女性に含まれる要素は違います。バワ・カラーパを見れば、後ろから見ても前から見ても「この人は男性だ」「女性だ」というのが分かります。

これは眼にも含まれています。ですから男性の眼の形と、女性の目の形は違います。この働きはバワ・カラーパによります。男性と女性との違を生み出す働きがバワ・カラーパになります。これは眼だけでなく、全身に含まれています。

たとえば男女が分からないように隠して、手だけを外に出しても、その手だけを見て「男性」「女性」とすぐに見分けることができます。この働きがバワ・ダスラ・カラーパになります。

バワ・ダスラ・カラーパは体の全て、全身に含まれている要素で、見ればすぐに男性か女性かが分かるようになっています。


・眼に含まれるその他の物質
また眼にはこのほかに、心によって作られる物質があり、「8つの要素」があります。※地、水、火、風、色、匂い、味、栄養素の8種類。

さらに眼には「時節」という要素もあります。時節とは、暑い・寒いといった気候条件で生まれる要素です。※地、水、火、風、色、匂い、味、栄養素の8種類。

しかも眼には「食」による要素もあります。「栄養素」は毎日食事として摂っている食べ物から作られる物質です。地、水、火、風、色、匂い、味、栄養素の8種類。


・観察対象が分かっていないとヴィパッサナ瞑想はできない
ですからヴィパッサナ瞑想をする際、どういう対象をヴィパッサナ(観察)するかがわかるようにする必要があります。

物質にどういう種類があって、どういった原因で出来ているかといったことを見分けて、はっきり見て、それからヴィパッサナ瞑想を行うことが大事になってきます。

たとえば眼の「見える要素(チャック・ダスラ・カラーパ)」をヴィパッサナ(観察)する場合、まず四界分別を行います。眼を作り上げている物質を微粒子(カラーパ)に分解します。

そして、これらの微粒子の中で「透明感(パサダ)」の要素を取り上げます。「透明感(パサダ)」とは見える要素そのものになります。透明感(パサダ)は、体の他の部分にもあります。そして眼に含まれる「透明感(パサダ)」を確認するために、体の他の部分にある同じ要素を探して比較し、確認します。

また「耳」の場合、「聞こえる要素」があります。耳の場合でも「透明感(パサダ)」の要素があり、耳は音を対象として見(聞)ます。耳で「聞こえる音」というのは、「透明感(パサダ)」によって「聞こえ」ています。眼と同じように、これを確認します。


・無常を観る
そしてこれらの眼の要素を全て確認できたら、これらの要素をヴィパッサナ瞑想で確認していきます。生じては滅する、生じては滅するという「生住異滅」を観察して、無常をみていきます。

こういう要素(10個や8個の要素から成る微粒子)は、一気に現れて一気に消滅し、一気に現れては一気に消滅するということを繰り返しています。これは眼だけでなく、全てにおいて起きています。そしてこういう生成と消滅を見て「無常」を知ります。


・苦を観る
生滅は何回も繰り返して起きていて、1秒の間に、早い速度で何度も起きて、この生滅が自分を「苦しめている」ことがわかります。これが「苦」です。これを知ることが「智慧」で、ヴィパッサナ瞑想で見通すわけです。


・無我を観る
そしてこういう生滅を繰り返した後で、何かが残るかといえば何も残らないのです。何もありません。しかも自分で抑えること(自由にコントロールすること)もできません。

これは自然の現象で、ただ生滅を繰り返しているだけです。そしてこれを「無我」といいます。


・ヴィパッサナ瞑想を行う前に物質の現象と心の現象を確認
ヴィパッサナ瞑想を教える前に、ルーパ瞑想やナーマ瞑想を行って、物質の現象と心の現象を確認することが重要になってきます。
このように分かった上でヴィパッサナを行うなら、自分の智慧で全てはっきりと無常を確認できて、ヴィパッサナをマスターすることができます。

ですので「ジャーナ(禅定)を得たらすぐにヴィパッサナをしてもいいですよ」と言っても、何を確認し何を観察すればよいかの「対象」が分からないと、ヴィパッサナがなかなかできなくなります。

こういうヴィパッサナ瞑想ができないと、なかなか悟ることも難しくなります。
パオで教えているのは、こういう方法になります。



Q.アーナパーナ瞑想中、膝とかの体が痛くなった場合でも、呼吸に意識を向けるようにしたほうがいいのでしょうか。

A.呼吸に集中するようにしたほうがいいですね。毎日、瞑想をしていれば自然に体は慣れてきて、体の痛みは消えていきます。なるべく呼吸だけに専念して、瞑想をすることです。



Q.パオの修行は先が長いように思いますが、普通の主婦でも行っていく価値はあるのでしょうか。

A.主婦の場合は家庭のことがありますので、定年退職なってからとか、子どもが手放せる時期になれば、ミャンマーのモービーに行って瞑想を行うことも可能です。

あるいは自宅で、自分で時間を設けて毎日、1時間、アーナパーナ瞑想をするとか、そういう努力は必要になってきます。これを続けていけば禅定を得る可能性もあります。



Q.自分で修行をすることによって、精神的に悩みを抱えている方を立ち直らせることは可能でしょうか?

A.できる可能性はあります。また精神に悩みを抱えている方自身が、ここまで行うのはかなり難しいですが、自分の心を安定させることなら可能性はあると思われます。



Q.三法印における「苦」についてですが、「森羅万象は全てが苦である(一切皆苦)」という解釈で正しいのでしょうか。

A.全てが「苦」であるということで正しくなります。真理の立場からいえばスカ(楽)はなく、ドゥッカ(苦)しかありません。生きている物でも、鉱物でも、全ては生住異滅という生滅を繰り返していて本質は「苦」になります。しかし凡夫の感性では三法印で言われている「苦」は分かりません。けれどもヴィパッサナ瞑想を行って観察できれば、一切皆苦であることが分かるようになります。



イマーヤ ダンマーヌダンマパティパッティヤー ブッダン プージェーミ
イマーヤ ダンマーヌダンマパティパッティヤー ダンマン プージェーミ
イマーヤ ダンマーヌダンマパティパッティヤー サンガン プージェーミ

私は、ブッダの教法に従って実践し、ブッダを敬い尊びます。
私は、ブッダの教法に従って実践し、ダンマを敬い尊びます。
私は、ブッダの教法に従って実践し、サンガを敬い尊びます。


2012年8月25日(土) クムダセヤドー浜松市瞑想会
◎1/2 パオ瞑想における修行の進め方
◎2/2 クムダセヤドー・質疑応答










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