パオ森林僧院における修行の進め方

パオ森林僧院における修行の進め方

2012年8月25日(土) クムダセヤドー浜松市瞑想会 法話

パオ森林僧院の修行体系について

1.五戒を守る・・・「戒」
まず修行にとって大事なことは、「戒律」をしっかりと守ることです。在家は五戒を守ることです。できれば八戒斎(はっかいさい)または十善戒(じゅうぜんかい)を守ることです。戒律は、瞑想を進める上で欠かせません。戒律が出来ていないと、まず修行は進みません。

五戒の一番最初は殺生(せっしょう)。殺生をしませんということです。生き物を殺すことがないように注意しないとなりません。⇒不殺生戒(ふせしょうかい)。

二番目は偸盗(ちゅうとう)。盗むことですけれども、そういうことをやらないように注意をすることです。⇒不偸盗戒(ふちゅうとうかい)。

三番目は邪淫(じゃいん)。不倫しない。不倫をして相手の家庭を壊してはならないということです。⇒不邪淫戒(ふじゃいんかい)。

四番目は妄語(もうご)。嘘を付かないことです。⇒不妄語戒(ふもうごかい)。

五番目は、自分の意識を弱めること。たとえば麻薬、お酒、薬物といったものをとらないことです。⇒不飲酒戒(ふおんじゅかい)。


戒律を守る上で欠かせない慚愧(ざんき)の心
また五戒を守る重要な心の働きは、ヒリ(慚:ざん)とオタパ(愧:き)です。

・悪いことを行うことへの恥ずかしさ(ヒリ:慚)、
・悪いことを行うと悪い結果が来ることを怖がる心(オタパ:愧)

ヒリとオタパがないと、簡単に悪を犯してしまいます。

ヒリ(慚)とオタパ(愧)は、戒律を守るために一番重要な心です。この二つは、自分の心を綺麗にする重要なダンマ・教えになります。戒律を守りたいとしたら、まずヒリ(慚)とオタパ(愧)が自分の心に培うように努力することが大切です。


2.禅定~アーナパーナサティ・・・「定」
この「戒律」を基本とし、「戒律」の上に、「禅定(定)」が出来てきます。ですからパオ瞑想では、まず「戒律」をしっかり守って、それから禅定を作る瞑想に入ります。

アーナパーナ瞑想を行う場合は、呼吸に30分~1時間、集中する(気づく)ことを継続します。この間に、他のことや妄想、思考が入らないようにします。

次第に光(ニミッタ)が現れてくるようになります。呼吸に長く集中(気づく)できればできるほど、ニミッタが安定してきます。最初はゆれていたり、人によっていろいろな形に出てきます。

しかしどんなニミッタが出てきても構わずに、呼吸に集中して(気付きを入れて)いきます。そして集中力(気付きの力)が長ければ長いほど、ニミッタも安定してきます。

ニミッタにはいろいろな形があり、その人その人によって形は違います。ある人は丸い形、星の形、棒の形、雲の形、ダイヤモンドなどいろいろと出てきます。

ニミッタは、自分の鼻の先に止まって光って現れてきます。

ニミッタが安定して動かなくなってきたら、呼吸からニミッタに集中します。ニミッタに1時間集中できるように練習します。
1時間なら1時間、決意した通りに集中できるようになると、第一禅定、第二禅、第三禅定、第四禅定に行くことを教えることができます。


40種類のサマタ瞑想を実習する
アーナパーナ瞑想で禅定が完璧にできるようになれば、次は四十種類のサマタの瞑想の仕方を教えます。

アーナパーナ瞑想が成功すれば、まず「三十二身分」を行います。「三十二身分」とは体の三十二箇所を確認する瞑想です。
「三十二身分の瞑想」とは、アーナパーナ瞑想で得た禅定力で、髪の毛、体毛、皮、骨、肉、すい臓、心臓、腎臓、腸、胃などの体の32の部分を見ていく瞑想です。

三十二身分ができれば次は「白骨観」です。※白骨観とは不浄観とも言われます。

白骨観が出来れば、骨の白色を取って、白遍の瞑想を行います。白遍などは「十遍処(カシナ)」の瞑想といいます。白遍以外にも赤、青、黄などカシナの瞑想には10種類あります。

カシナの瞑想をマスターしたら次は「慈悲の瞑想」です。
その後に「仏随念」「死随念」を行っていきます。


3.ヴィパッサナ瞑想・・・「慧」
ここまで出来れば禅定は完璧にマスターしていますので、今度は禅定力を使ってヴィパッサナ瞑想を行っていきます。※しかしいきなり無常・苦・無我を悟るヴィパッサナ瞑想はしないで、ヴィパッサナ(観察)する対象をまず確認します。

・ルーパ瞑想
ヴィパッサナ瞑想には段階があって最初に「ルーパ瞑想」を行います。ルーパ瞑想は「物質の現象」を見るヴィパッサナ瞑想になります。

最初に「四界分別観」を行います。四界分別観では、地・水・火・風という四大元素を観察していきます。四界分別観を行うと自分の体の中が小さな微粒子で出来ていることが見えるようになります。
そしてこの微粒子に、10種類の要素が含まれていることを観察していきます。その10種類とは、地・水・火・風という四元素、栄養素、臭い、色、味、命根、パサダ(透明)の10要素です。四界分別観のヴィパッサナ瞑想で、これら10種類の要素を観察していきます。

なお微粒子は、10種類の要素だけでなく、8種類の要素が含まれた物質(微粒子)もありますし、9種類の要素から成る物質(微粒子)もあります。※物質は、含まれる要素の数によって3タイプに分けられます。

・ナーマ瞑想
ルーパ瞑想をマスターしたら今度は「ナーマ瞑想」に進みます。ナーマ瞑想とは「心の現象」を観る瞑想です。これもヴィパッサナ瞑想の一つです。ナーマ瞑想では、「心」と「心所(心の成分)」を観ていきます。

・縁起瞑想
ナーマ・ルーパができれば「縁起の瞑想」に進みます。「縁起の瞑想」とは原因と結果を観察する瞑想です。どういう原因でどういう結果を生じているかを観ていく「縁起の瞑想(十二縁起の瞑想)」を教えます。

・四特相
十二縁起の瞑想が終われば、次に先の物質を4段階に分けて広めて観察する瞑想方法に進みます。「四特相」といいます。ナーマ・ルーパの瞑想は、最初は一種類の相で見分けて、無常・苦・無我を見ていきます。四特相では、4つの方法で、ナーマ・ルーパの現象(無常・苦・無我)を見ていきます。※地・水・火・風の性質等を観察していきます。

・ヴィパッサナ瞑想
四特相をマスターすれば、やっとここで完全なヴィパッサナを行います。何を見ても無常・苦・無我を見通せるようになります。


■パオの教え方とは
パオの教え方は、最初は「戒律」から始まり「戒律」が基本になります。そして戒律の上に「定」、要するに禅定があります。禅定を作ったら「智慧」の行、つまりヴィパッサナに進みます。要するに、「戒・定・慧」を行っていきます。※戒(五戒などの戒律)、定(禅定)、慧(ヴィパッサナ)

簡単にはできないと思いますけれども、速く進む人もいれば遅く進む人もいます。

初心者は、アーナパーナだけでも大変ですけれども、マスターできるように努力してがんばっていくことです。またこのようにたくさんのカリキュラムを書くと大変だと思うかもしれませんが、アーナパーナが成功すればすぐに進んでいきます。

第一の壁はアーナパーナで、アーナパーナで得た禅定によって、他のことはできるようになります。




2012年8月25日(土) クムダセヤドー浜松市瞑想会
◎1/2 パオ瞑想における修行の進め方
◎2/2 クムダセヤドー・質疑応答




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